無意確認生命体
……あぁ、……そっか。……なんだ。……そうなんだ。……そういうことだったんだ。
そして、気付いてしまった。
私の中の、志田に対するこの思いは……、お母さんに対するそれと、すごく似てるんだっていう事に。
私がまだ、自分のことも何にも知らなかった頃、ただ純粋にお母さんに対して抱いたあの想いに、限りなく似てるんだって……いう事に。
そう。私はただ、「ひとりの人として」、志田由高って奴のことが……好きなんだ。
それは、後付けの理由なんて、なんにも関係のない気持ち。
「男だから」とか、「注意するべき相手」だとか、そんな卑しい事情なんて関係ない、ただ純粋に相手を想う気持ち。
私みたいな人間でも抱くことが出来る、たったひとつの、誰かを想う気持ち。
確かに普通の人が異性に抱く感情とも似てるけど、肉体的な命令のない、心だけの動き。
そっか……。
それじゃあやっぱり……私、あんたのことが……好きだったんだね……。
……あ……あはは……。何……コレ……?
お母さんの本心に気付いて、それで……志田への想いの答えが……見つかっちゃったの?
なんなの……?
……ねぇ、なんなの……これ。
こんな……こんなの……、私には、誰かを愛することは、罪なんだって……、
相手は、どうやっても私を拒むんだって……、
そう言われてるみたいなもんじゃないか!
駄目だよ!
もう遅いよそんなの!
だって、もう好きになっちゃったんだよ!
だってもう、それに気付いちゃった!
相手にも私を好きになってほしいなんて言わない……。
……ただ、せめて、嫌いにならないでほしい……。
ねぇ……それでも、やっぱり、エゴなの……?
……ルール違反なの?
――私の問いかけに応えるものはなく、辺りにはただポツポツと窓を打つ雨の音が虚しく響くばかりで、それは翌朝まで変わることはなかった。