無意確認生命体
脱衣所に置かれた姿見に、私が映る。
いつも通り、寝癖だらけの髪は、ひと月前より少し明るい色に変わっていた。
このあいだの休みの日に、美智にやってもらったのだった。
私は髪を染めるのなんて初めてで、色選びから染めるところに至るまで、ほとんど美智に任せっきりになってしまったが……。
そのまま、鏡に映っている自分の姿を、上から下まで見回してみた。
そしてあの日、志田が言ってくれたように、女性的な体のラインを感じさせながら、決定的に女性とは違う部分でいつものように目が留まる。
私の秘部には、生理を装うために自ら付け続けてきた生傷が、痛々しく残されている。
一昨日つけたばかりだったそれは、まだこすれるとけっこう痛かった。
これはこれから先も、ひと月ずつに、今までと変わらず癒える間もなく重なって増え続けていくのだろう。
きっと、私に更年期と呼ばれる時期が訪れるまで。
ずっと……。
……だけれど、今の私の心は不思議と穏やかだった。
この、以前は女性として化けるためだけに求められていた義務が、今は私が女性として生きてもいい権利なんだと、そう思えるようになっていたからだった。
私は姿見から目を離すと、そのまま風呂場へと入っていった。