無意確認生命体
『あ……、連休の前、なんか昼休みに、言い合い……してたし。その後も、なんか、気まずそうだった……から』
あぁ、なんだ。そういうことか。びびった。
でも、それならありがたく甘えさせてもらおう。
今、柏木くんは私とは話してくれそうにないし。
――それにしても、今まであんまし喋ったことなかったけど、いい人なんだなぁ、榎本くん。
「うん。そうだね。ちょっと気まずい。ごめん! 悪いけど、お願いしてもいいかな?」
『……うん。わかった。そ、それじゃ。また、明日……』
「あ、うん。おやすみ。……ホントゴメンね。それと、ありがとう。それじゃ」
『う……ぅん……』
それで電話を置き、私は居間へ戻った。
「誰から電話ぁだったんだい?」
と、おじぃ。
「あー、うん。クラスの子。なんか、明日教室で親睦会やるんだって。5時からって言ってたから、多分ご飯も出るんだと思う。だから、明日は晩ご飯いいよ。今日みたいに待ってたら駄目だからね?」
念を押して言っておかないと、この二人はすぐ忘れる。
痴呆、というよりは天然なのだ。
「へぇーえ。お休みの日にそんな事するのかい。すごいねぇ」
「んー。そうだね~。多分休みも明日で終わり、だからこそってことなのかも」
「ほーお。そんじゃあぁ楽しんでこい。おばぁ、風呂ぉ、そろそろ沸いたんじゃねえぇか?」
「あー、はいはい」
その後、おじぃ、おばぁ、私の順に風呂に入り床についた。
明日は親睦会か。
こういう賑やかそうなイベントは好きだ。
きっと良い思い出になる。
私はそんなことを考えながら眠りに落ちていった。
――結果として、この『親睦会』は、私にとってすごく強烈な思い出となる。
私がこの夜思い描いていたようなものとは、全くかけ離れた別物ではあったが――。