無意確認生命体
7.
男はオオカミなのよ~、とはよく言ったものだ。
私は彼らに対して軽蔑は抱かなかった。
男性の性欲ってゆうのは抗いがたいものだというのを知っていたから。
女とは比べものにならない、獣欲とも呼べるものがあるっていうのは、知識として知っていたから。
ただ、悲しかった。
彼らは仮にもクラスメイトで、みんな面識がある。
名前だって覚えている。
柏木、東堂、平西、香川、中田、榎本、山田。
この連休が始まる前まで、普通に一緒にこの場所で授業を受けていた、クラスメイトだ。
……だけど、ここにいる彼らはもう違う。この七人は、オオカミになってしまったんだ。
人間には「理性」なんて生産性だけ考えれば無駄なものがある。
だいたい、種の繁栄だけ考えるのなら、一夫多妻は当然だし、弱肉強食もしかるべきだ。
社会のモラルとか、善いとか悪いなんてそんなことは、人間以外の動物は考えない。
だけど私は、それを大事なものだと思っている。
何がどういう理屈でどういう進化をして、人間という理性とかいうものを持つ存在を生み出したのかなんて知らない。
だけれど、とりあえずその進化とやらの果てに「理性」ってものを得たのなら、それは無駄なものじゃないと、私は信じている。
それを信じていなければ、私なんて、存在する意味が全く無くなってしまうのだから。
私は、柏木くんをふった夜。自分のどうしようもない自責に嘆いた。
私は、昨日の榎本くんの何気ない気遣いを嬉しく感じた。
だけど、その彼らがここにいるということは、私のあの時の情動は、無意味だったってことになってしまう。
もはや彼らはオオカミだった。
弱肉強食を優先する野生の性質になってしまった。