無意確認生命体
それでも諦めるわけにはいかない。

もはや眼前に迫っていた柏木は、「のッ!」の瞬間私の腕に掴みかかってきた。

私は寸でのところでそれをかわし、もう一方の手に握られていた鞄を右ばらいに思い切り振り、柏木の側頭部を殴りつけた。

「――チッ!」

柏木はつんのめって、そのままこけた。

私はその隙に鞄を捨て、さっきまで座っていた椅子を両手で持ち上げて、目の前の連中に向け、思いっきりぶん投げる。

私のこの反撃はこいつらにとって予想外だったに違いない。


普段の私はどちらかと言えばおとなしい、押しが弱い性格だ。

でも、今は違う。

目の前にいる奴らは「アイツ」と同じなんだ。

そう思えば、私が手加減する理由はない!


そうは言っても相手は男でしかも五人。

どうやったって追っ払うのは無理だ。

かといって入り口は前も後ろも固められている。

逃げるのも困難。

このままじゃ、いくら抵抗したって捕まるのは時間の問題だ。


ならどうする? 考えろ私!


「っタカクとまってんなゥラァーッ!」

「ひ!」

次の瞬間、私は『ブンッ』という空気の摩擦音と、すぐ背後で耳をつんざくような破裂音を聞いた。


……こ、こわっ!


私が今投げた椅子を、東堂は叫びながら放り返したのだ。

私はとっさにしゃがんでそれを避けたが、そのまま椅子は私の頭上すれすれを通り過ぎ、背後の窓ガラスを砕き、下の花壇の方へ落ちていった。


あ……ありえない。なんだよこの馬鹿力。

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