無意確認生命体
10.
声が聞こえる。
誰かが叫んでいる。
声が聞こえる。
誰かが泣いている。
私はそれで目を覚ます。
これが初めてだったのか、それとも幾度もあったのか。
声がやまない。
誰かが叫ぶと、誰かが泣いていた。
私は声の元へ歩いていく。
目の前には襖《ふすま》。
声はこの向こうからのようだった。
私は襖に手をかける。
私は襖を開けられなかった。
叫ぶ声はやんでいた。
泣く声だけがただ響いていた。
私は「泣かないで」と声を掛ける。
泣き声はやまない。
ただ、さっきまでと違うのは
泣いているのが私だと言うこと。
狂った笑いに包まれていく。
泣いている私は、笑いに包まれていく。
泣き声だけはやまない。
泣き声だけが、ずっとやまない。