無意確認生命体
12.
「だ、誰がそんなこと言ったんですか!」
私は思わず叫んでしまった。
……う、数学の三島が睨んでる。
……職員室で叫んだのだから当然だ。
でも、叫ばずにはいられなかった。
何せ、私がここへ来る前、それも全校集会が終わった直後に、すでに例の事件の「当事者」から進言があり、しかも見事に捏造《ねつぞう》された内容だったのだから。
「C組の志田由高《しだゆたか》って知ってるか? あいつだよ。勇敢な奴だよなぁ! 自分は怪我して。体まではってよぉ!」
シダ? 誰? 知らない。
なんだそいつ。
そんなの、昨日のメンツにはいなかった。
いったいどうなってるの?
新井先生から聞いた話はこうだ。
昨日、たまたま部活で学校に来ていたその志田とやらは、校舎三階の窓に不振な人影を見かけた。
それを怪しく思った志田は、その正体を確かめるため、三階へ向かった。
そして、人影を見た2-Bの中を確認した。
すると、見も知らぬ部外者の中年の男が、女子生徒(コレは私のことなのだろうか)に乱暴していた。
それを見た志田は、中年を止めに入り、取っ組み合いになった。
逆上した中年は椅子と女子生徒を窓の外へ放り投げた。
そして、志田に凶器で怪我を負わせ、逃げ帰った。
志田はその後、女子生徒の安否の確認に向かう。
女子生徒は怪我こそしていたものの、命には別状がないようで意識もはっきりとしていた。
だが、ひどく脅えており、志田が声を掛けると逃げていってしまった。
仕方がないので自分の怪我の手当をするため保健室へ向かった。