無意確認生命体
なんだこれ?
事実は「誰かが襲われて椅子と一緒に窓から落ちた」ってところだけじゃん!
これじゃあ昨日の連中全員無罪放免だ!
志田……、思い当たる人物はひとりいる。
あの中にいなかった奴で、私が顔も見てない奴が、ひとりいる。
あの、飛び降りた後、私の肩を掴んだ男だ。
……くそ! 先手を打たれたのか!
いや、今からでも事実を話そうか?
私が当事者だと言えば信じてもらえるかな。
と、考えていたその時。
「しつれ~しま~す」
と、誰かが職員室に入ってきた。
それは、聞き覚えのある声だった。
「あ、いたいた。やっといたな。おーい。近江雌舞希《おうみしぶき》~」
その声に何故だか名指しで呼ばれた。
声の発生源に視線をむける。
そこには、左手に包帯をぐるぐる巻きにした、初めて見る、声だけ知っている男がいた。
そう、この男こそが志田由高、その人だったのだ。