無意確認生命体
私はまたも今更ながら、自分がこの人にとってどれだけの災難だったか気づき、
「う! ぅあ! ご、ごめん! ホント! あの時、私、動転してて! さっきも! 貴方は全然関係なかったのに! 早とちりして、どなっちゃって! その、ごめんなさい!」
と、頭を下げた。
なんだか、すごく恥ずかしかった。
私が頭を上げると、志田はちょっと驚いたような顔で、
「それ、もういいって。オレもキミがビビってんの、気付いてたのに配慮足りてなかった。ごめんな。でも、あの花壇の土、耕しといて良かったよ。下手したら大怪我だもんなキミ。……ん。じゃ、これ名誉の負傷だ!」
と言ってくれた。
……でもそれは、ちょっと違うと思う。
志田はちょっと笑いをこらえるような顔で言う。
「最初刺してくるし、今日もいきなりキレてたし、短気な奴って思ったけどさ」
……うううう、ごめんなさい。
そして彼は、なんだか嬉しそうに、こう続けた。
「けっこう話せるじゃんキミ。オレも、いらんコトしちゃって悪かった。それで誤解されたんだもんな。すまん」
彼はそれで振り返り、今度こそ去っていった。
取り残されたようにその背中を眺めていた私は、当初の目的も忘れ、穴があったら入りたい気分でいっぱいになっていた。
その時、『キーンコーンカーンコーン』と、休み時間の終了を告げるチャイムが鳴り響き、私はようやくここへ来た目的と、その目的を果たす機会が先延びになってしまった事に気付いたのだった。