無意確認生命体
14.
教室へ戻ってみると、美智が柏木の襟首を掴み、文字通り締め上げるようにして迫っていた。
朝学校に来てみれば、教室はぐちゃぐちゃ。
歪んだり天板に亀裂が入ったりしている私の机と椅子。
そして、体中傷だらけのアザだらけになった私の体。
これだけ見れば誰だって、この教室の惨状と私が無関係だとは思わないだろう。
まして美智は、昨日の私の状態と、その後の私の言動から、犯人の目星までつけている。
よって昨日の言葉通り、「発見次第即処刑」が実行されることになったのだろう。
柏木、いや、多分あの場にいた全員が、そこまで深く考えられるような性格ではないんだろう。
例の「親睦会」にしたって、巧みだったのは相手をハメる部分までで、(それにしたって今にして思えば、知的とは言いかねたが)後の事なんてほとんど何にも考えてない様子だった。
頭数だけ揃えて、無理矢理押さえ込めれば証拠は何も残らない、とでも思っていたのだろう。
まったく。
「とにかく犯せりゃいい」
って……、猿かってゆうの!
でもまぁそんなだから、想定していなかったのだ。
獲物があの密閉された(と彼らは確信していた)部屋からまんまと逃げおおせる可能性なんて。
それも、こんなにどうしようもない事件の痕跡だけを残して。
多分、抵抗されることすら、ほとんど念頭に置いてなかったんじゃないだろうか。
で、ことが失敗し冷静になってみれば、現場は荒れ放題のひどい有様。
自分たちに得る者は何もなし。
怖くなって逃げ出してしまった。
――といったところだろうか。
それは柏木を初め、昨日いた連中の顔を見れば一目瞭然だった。
――まぁ、当事者である私から見れば、だけど。
つーか、私の方がその何百倍も怖かったっての!