無意確認生命体
柏木は美智に締め上げられて真っ青な顔をしながら、何も言えないでいる様子だった。
私としては、もうここまで堕ちたんなら、むしろ開き直って、しらを切ってくれた方が、こっちも気兼ねなく叩きのめせるから気持ち良かったんだけれど。
それにその方が美智に火を点けるだろう。
それはそれで面白そうだし見てみたかった。
――そこで気付いた。
私の中から、朝は渦巻いていた毒が抜けていることに。
こんなことを考える余裕、さっきまではなかった。
さっきの、職員室前でのやりとりで私は完全に意気消沈状態に陥ってしまっていたのだ。
こいつらのことなんか、もうどうでもいいやと、他人事のようにさえ感じている自分に気付き、私は驚いた。
そして私は美智の真後ろまでつかつかと歩いていって肩に手を置き、
「美智、もうチャイムなってる。先生来るよ」
と、至って冷静な声で話しかけた。
「あ! 雌舞希、どこ行ってたの! この野郎、さっきから全然だんまりで、なんにも答えやがらないんだよ! ネタはあがってるってんだよ! オラ! いい加減なんか喋れ!」
美智はそのまま柏木をぶんぶんと揺すった。
対する柏木は、いつもの馴れ馴れしいニンマリ顔はどこへ行ったのか、青い顔で揺すられるまま、力なく俯いている。
私は、それを見ていてひとつ閃いた。