無意確認生命体
16.
「お~い、近江雌舞希~」
その日の昼休み。
思ってもない客が現れた。
あの志田由高だ。
「アンタダレ!」
吠えたのは美智だ。
昨日のことでずっと責任を感じてしまっている美智は、私に近づくあらゆる男に警戒していたのだった。
ってゆうか、今日は職員室に行った休み時間以外、ずーっと私を見張って(?)いた。
「ん? あぁ、こいつトモダチ? なに? なんかオレ、威嚇されてない?」
志田は美智の問いをあっさり無視して私に訊いてくる。
……これは、私が仲立ちするしかないのか?
「うん。辻美智っていって……あー! 美智。そんな誰彼構わず睨まない。えっと、こっちは志田由高くん。えっと、C組の人」
「知らん!」
私だってほとんど初対面だ。
相変わらず美智はシャアーッ! っと猫みたいに威嚇している。
「ツジ? ん、覚えとく。それよりさ、昼飯なんだけど」
その言葉に鋭敏に反応する美智。
「昼飯!? 駄目! 不許可! しぶちんはあたしとしか食べられない体になってしまってるのだ! だから帰れ!」
そして無茶苦茶を言う。
「じゃ三人で食うんならいい?」
「駄目! 一人で食え!」
「一人で食えないから来たんだよ。ほれ近江雌舞希。キミにやられたこいつが、オレに飯を食わしてくれんのだ。だからこれはキミが恩を返すチャンスだぞ? このツジを説得しろ」
と、包帯巻きの左腕を見せつけてくる。
うぐ……それを言われると、痛い。