無意確認生命体

……はー、しょうがない。

この志田についてだけは本当に私が悪かったのだ。

「美智。そういうんじゃないよ。ホントに私の不注意で彼の手は傷付いたの。ただ、その理由が……あはは、私の恥ずかしいミスだったからさ。気を遣ってくれてるんだよ、彼は。ん。いいじゃん。三人で食べよう?」

美智は私の顔をじーっと見た後、

「じゃ、あたしのフォーク貸してやるから、志田、お前はそれ使って右手で食べろ」

と言って、刺すつもりかと言いたくなるような勢いで志田にフォークを差しだした。

それに対し、

「ツルのひとこえってやつ?」

などと言いながら、フォークを受け取る志田。


あはは。言い得て妙だと思った。


「でもこれだとオレ、こっち食い来た意味無くない?」

「んなことない! アンタはフォークを手に入れた! 箸よりよっぽど食いやすい!」

「おいよ、近江雌舞希! 恩返しはどうなった!」

「そんなの初めからない。あれはチャラって言ったよ? それと、いちいちフルネームで呼ぶの、やめてほしい」

「だって、キミの名前、どこで切れるかわからんし。おうみし、ぶき? おうみ、しぶき?」

……『おうみし』ってなんだよ。
< 54 / 196 >

この作品をシェア

pagetop