無意確認生命体
……はー、しょうがない。
この志田についてだけは本当に私が悪かったのだ。
「美智。そういうんじゃないよ。ホントに私の不注意で彼の手は傷付いたの。ただ、その理由が……あはは、私の恥ずかしいミスだったからさ。気を遣ってくれてるんだよ、彼は。ん。いいじゃん。三人で食べよう?」
美智は私の顔をじーっと見た後、
「じゃ、あたしのフォーク貸してやるから、志田、お前はそれ使って右手で食べろ」
と言って、刺すつもりかと言いたくなるような勢いで志田にフォークを差しだした。
それに対し、
「ツルのひとこえってやつ?」
などと言いながら、フォークを受け取る志田。
あはは。言い得て妙だと思った。
「でもこれだとオレ、こっち食い来た意味無くない?」
「んなことない! アンタはフォークを手に入れた! 箸よりよっぽど食いやすい!」
「おいよ、近江雌舞希! 恩返しはどうなった!」
「そんなの初めからない。あれはチャラって言ったよ? それと、いちいちフルネームで呼ぶの、やめてほしい」
「だって、キミの名前、どこで切れるかわからんし。おうみし、ぶき? おうみ、しぶき?」
……『おうみし』ってなんだよ。