無意確認生命体

2.


「お~い! しぶちぃ~ん!」


通学途中、信号待ちをしていた私の後ろから恥ずかしいニックネームで呼ぶ無礼な奴が現れた。

振り返ると、健康的な褐色の肌にショートヘアが特徴的な、いかにもスポーツやってますってな印象の娘が、ママチャリにまたがって片手をブンブン振りながら近づいてくるのが見えた。

クラスメイトの辻美智《つじみち》だ。

小学校からの、良く言えば親友。

悪く言えば腐れ縁である。


彼女は私の隣まで来ると、『キキィーッ!』と、ママチャリを急停止させて、にかっと笑顔を向けた。

「おはよう、美智」

負けずに笑顔で返す私。

「っはよー! ね、しぶちん今日さ、朝の星占い見た?」

「星占い? テレビの話? ううん、見てない。うち、朝は大抵NHKだから」

「あー、そっか。しぶちん家、朝はお爺ちゃんとお婆ちゃんといっしょだもんねぇ。チャンネルも渋いチョイスになるかー」

『しぶちんち』って、なんだかなぁ……などと考えながら応対する。

「まぁ、どのチャンネルでもやってるニュースはおんなじだしね。私は別にいいんだけど。それで? 星占いがどうしたっての?」

私としては興味のない話であろうが、一応聞き返す。

「あ! うん、それよそれ! 今週のアンタの運勢がさ、すん~ごくいいワケよ!」


…………。


なんじゃそりゃ!

一瞬ツッコミかけたが、ココで話を折ると美智は多分キレる。

なので、

「へぇ、そうなの」

と、返事をしておく。

すると美智は、

「何だよその気のない返事はぁ! もっと嬉しそうにしろよ!」

……それでもやっぱりキレた。
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