無意確認生命体
18.
こうして、二人して職員室へやって来た。
私は担任の新井先生に掻い摘んで事情を説明する。
私が例の事件の被害女子生徒だということにはなんとなく気付いていたらしく――まぁ、私の傷と机を見れば当然かもしれないが――隣にいるのが武勇伝の志田だということもあって、新井先生は応接用の席で座って待っていることを許可してくれた。
「ごめんね。こんな変なこと頼んじゃって。会ったばっかなのに」
「んぁ? いや、いいよ。それより、これなんだけどさ」
左手を差し出す志田。
……ぐ。また嫌みを言う気か?
許したって言ったくせに……。
「これ、昨日から包帯替えてないんだよね。さっきちょっと触ったら、なんかぐしゃぐしゃんなっちゃったんだよ。昨日巻くときは結構楽に出来たんだけど。一日経ってしわが増えたらからかな。上手く直せないんだよな」
あ、嫌みじゃなかった。ん?
よく見ると、確かに左手に巻かれた包帯は見苦しく、ぐしゃぐしゃになっていた。
「……え? なに?」
志田の左手をしげしげ見つめたあと、いつまで経ってもその手を引っ込めないので視線を上げてみると、なんだかもの言いたげな目で見られていることに気付いた。
「これ、直すの、頼めるか? えーっと。……男に触るの怖い、とかだったら無理しないでくれよ?」
あ、ああ。なるほど。そういうことか。
「あ、あー。ゴメン、また嫌みでも言うかと思ったから、気付かなかった」
「おいよ! 雌舞希。ちょっとそりゃないよ。利き腕使えないの、ホント不便なんだぞ? グチっただけで嫌みとか言うな」
「あはは。ゴメンってば! いいよ、ちょっと見せて」
差し出された腕に巻かれた包帯を解く。
すごくぶきっちょな巻き方だった。
そしてガーゼの当てられた傷口を見た。