無意確認生命体
私は相変わらず面白がって眺めている志田に「助けてくれ」と視線を向ける。
それを察してくれたのか、彼はスポーツ飲料を一口飲んだ後、おもむろに言った。
「今思ったんだけど、雌舞希、なんか焼けたよな」
美智の動きがぴたりと止まる。
「ツジも結構黒いよな~。一人前って感じでさ。ん、雌舞希もこんな感じになれるまで、がんばれよ。スポーツは体にいいからな」
それで言い終わったとばかりに、またスポーツ飲料に口を付ける志田。
…………?
うえッ? え?
それで終わりかよ!
そ、それじゃあ火に油じゃないか。
私が思ったその時、
「しぶちん。園芸部に戻りなさい。今日すぐに!」
ガシ! と私の肩を掴み、180度意見を翻す美智。
……早かった。
え? でもなんで?
私はこの美智の突然の気変わりが理解出来ずにいた。
すると、ポカンとしている私の制服のシャツの襟元に、美智はいきなり人差し指をつっこんできた。
そしてそのまま顔を寄せ指を引っ張り、私の胸元をのぞき込む。
「うわっ! なっ何!?」
私が取り乱すのをよそに美智は、
「うわぁ……ホントだ。……焼けてる」
と、私の鎖骨あたりにある日焼けの境目を見ながら、なんだかこの世の終わりみたいな口調で言った。
事が全く飲み込めず、熱くなった顔に気付かないようにしながら美智の手をどかせる私。
そりゃ炎天下で部活やってりゃ焼けるでしょ?
何が不思議だっての?
「しぶちんの、美白が、白肌が……う、うう……」
美智の泣きそうなその呻きを聞いて、私はここでやっと、この展開のわけを理解した。
相変わらず面白そうにスポーツ飲料を飲みながら私たちを眺めている志田。
くぅ……、なるほど。オヌシなかなかやりおるな。
……結果的には助けられたが、何故だか素直に喜べない私だった。
ううう……くそぉ。
角度的に、確実見られた……。