無意確認生命体
「あれ? どうした? こんなとこで」
私が校舎裏の花壇に着いたとき、そこにはまだ誰もいなかった。
それで私は特に何するでもなく、自分があの日、落っこちた辺りをボーッと眺めていた。
すると、しばらくしてから、背後から声を掛けられたのだ。
「あ、志田……か」
「あー、そういやその辺だったな。キミが落ちてきたの。何? 事件現場に戻ってくる犯人みたいなヤツ?」
振り返ってみると、志田は園芸用の道具なんかをバケツに入れて、使える方の右手で持って立っていた。
「椅子が落ちてきたのは、……だいたいこの辺だったな。オレさ、その時、丁度この辺りでしゃがんで花いじってたんだよ。だから、ガッシャーンって聞こえて、いきなり目の前に椅子落ちてきたときはマジでビビった。そんで、なんだコレ? と思って持ち上げて、背もたれの名札見てみたんだ。そしたら今度は、そっちにキミが降ってきた。や、ホントよく生きてたよな~、お互い」
私は、ただボーッと志田が話すのを黙って見ていた。
「ん? どうした? なんだよボケッとして。んー? 生理か?」
それを聞いて、途端に私はプッと吹き出してしまった。
「下品。最低。小学生か。……や、ごめん。ちょっと、なんか、志田がいるのが不思議で。なんでいるんだろう、って思ったら、ボーッとしちゃった。考えたら当たり前なのにね。園芸部なんだし」
「は? 何ソレ? オレにしてみりゃ雌舞希がここにいる方のが変なんだぞ? オレは毎日ここに来てる」
「ん。そうだよね。はは、何でだろ……」
「まー、いいや。……そんで? どうしたんよ?」
「あ~。や、別に。特に意味はなくて。昨日まで放課後は部活漬けだったからさ。だからなんか、すぐ帰るのが物足りなかったってゆうか。一応、私、園芸部に戻ったわけだし。……なんとなく、来てみた」
「ふーん。じゃ、手伝ってくれるの?」
「あはは。うん。まぁそうだね。来ちゃった以上、何もしないで帰るのも馬鹿みたいだし」