無意確認生命体
そんなわけで私たちは、志田の言う「部室」へやってきた。
だが。
……えーっと。何コレ?
……これは何の冗談かしら?
そこは屋根なんてありもしなければ、部屋でもなんでもなかった。
たしかにここは旧校舎。
いわゆる部室用校舎ではあった。
しかし、ここは世間一般的にいう、「部室」なんてところでは、断じてなかった。
「なぁ! ここからの景色、スゲェだろー? 坂の下の方は一望出来んだよ!」
初めて同級生を「部室」へ招き、はしゃいでいるのは志田少年。
まぁ……確かに、眺めがいいのは認めるけどね……。
「ねぇ、部室に行くんじゃなかったの?」
当然の疑問をぶつける私。
「ん? あぁ。部室? 部室はソレ」
彼が指さす先には、「テントのようなもの」があった。
小学生が作った秘密基地みたいな、『かろうじて雨風しのげるかもしれないなー』といった、申しワケ程度のそれは、吹きつける風によって、はたはたと切なげにブルーシートをなびかせていた。
「……ね、これは、マジなんですか? 志田部長」
「なにが?」
「いや、だから……、ここが部室って話」
「部室はコレだって。ここは屋上」
そうなのだ。
ここは屋上だった。
それも、本来なら生徒が出入り出来ないはずの。
志田は何故か、旧校舎屋上扉の鍵を所持していた。
そして勝手に侵入して、屋上の一角に先程の、「テントのようなもの」をこしらえ、それを部室と称していたのだ。