無意確認生命体
志田少年は語る。
「この屋上のカギはさー、代々選ばれし園芸部員だけが受け継ぐもんなんだよ。去年はオレの他に二人、三年の先輩が花壇の面倒見てたんだ。で、その人らが卒業する時、オレにこのカギを託していったのさ。だって、園芸部だけ部室がないんだよ? 非道い話でしょこれ? そこで先人たちは立ち上がったのよ。なければ自ら掴み取る。で、こっそりココの合カギ作ったワケさ」
わけわからん。それって犯罪じゃないか。
「まぁ、最初はヤンキーの溜まり場みたいになってたらしいけど」
あぁ、それでなんだか納得した。
つまり昔、不良が溜まり場用として勝手に作っていた合鍵を後輩に代々受け継ぐうちに、柔らかい性分の人の手に渡り、たまたまその人がちゃんとした園芸部員だった。
それ以来、ここは園芸部専用の「部室」に変わった。
ということなんだろう。
……多分。
それにしてもよくまぁ今まで教師に没収されなかったもんだ。
「ここは本当の園芸部員だけの聖地なのさ。まー園芸部なんて、ほとんど帰宅部みたいな扱いだしな。顧問もいないし。で、今年オレ以外の正当な園芸部員第一号が、キミ。雌舞希ってワケ」
誇って良いのか悪いのか。
私には計りかねた。
それでもなんだか、私はそれに悪い気がしなかった。