無意確認生命体
21.
志田と私は旧校舎屋上で、先の『園芸部伝説』を始め、他愛のない会話をしながら、夕方まで時間を潰していた。
なんとも不思議だった。
この志田という男に対して、私はどうしても、全く、警戒心を持つ事が出来ないようだからだ。
今だって、この屋上の鍵さえ掛けてしまえば、それでもう密室と変わらない状態になる。
だというのに、私の心の中には、僅かばかりの不安もなく、志田に対する不信もなかった。
なんというのだろうか。
美智や、他の女友達と一緒にいる時とはまた全然違う、説明しにくいが、安心感のようなものを、私はこの志田に対して抱いているらしかった。
何故なのかはわからないが、私は「志田はそんなこと絶対しない」と、根拠なく確信をしていた。
そして実際、少なくとも今この間には、志田が私を傷つけるような悪意をぶつけることはなかった。