無意確認生命体

「う~ん。こういう家庭の事情とかってあんまヒトに話すもんじゃないんかなー。まぁいっか。オレとアイツはもともと親が違うんだ。ん、俗に言う義理の兄妹ってヤツだな。オレの父親と、10年前に再婚したアイツの母親の、互いの連れ子同士だったんだよ。そんで、親は3年前にまた離婚して、また互いの連れ子だけ連れて別れたってワケ。それから、ずっと会ってなかった。こないだ、――雌舞希と初めて話した日だな。あの日、昼にB組行った時、初めてアイツがいるのに気付いた。……それまでは、同じ学校にいんのも知らんかった」

私は、呆気にとられていた。

そりゃそうだ。

答えとしてはすごくわかりやすかったかもしれないけど、こんなこと、本人が言うまでもなく、ポイポイ他人に話す事じゃない。

「え、え? 何で? 何で、わざわざ私にそんなこと、言うの?」

「だって、説明した方が伝わりやすいじゃん。キミ、アイツと同じクラスなんだしさ。ツジはなー。こういう話は真剣には聞きそうだけど、駄目だな。猪突猛進《ちょとつもうしん》すぎるし」

「だから! そうじゃないよ。どうして私に言うの? そんなこと。自分で直接、浅瀬さんと話をすればすむ事でしょ?」

私は当然の疑問を口にする。

「んー。それが難儀なんだよなぁ」

「何で? 心配なんじゃないの?」

すると志田は、少しバツ悪そうに頬をかきながら、

「オレ、嫌われてんだわ、アイツに。ハルミのヤツ、オレに気付いてるくせに、目も合わせやがらん。……ん~、だからさ――雌舞希。こんなの、オレが頼むのも変だってわかってんだけど。アイツと仲良くしてやってくんないかな。オレの代わりにってんじゃないんだけど。アイツがいじめられるようなことがあったら止めてくれ、とまでは言わないけどさ。優しくしてやってほしいんだよ」

と、告げた。

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