無意確認生命体
「で、なんでオレのおごりになるワケよ?」
その日の昼休み。
志田少年は当然の愚痴をこぼす。
「はんは! ほんはのほはほあへはははえふひ!」
私のためという名目で無理矢理志田におごらせたパンを、何故か自分が口いっぱいに頬張りながら、なにやら鳴いている悪魔ミッチー。
「おいよ! 近江雌舞希! どうなってんだこれは!」
「知らない。私は止めました。文句はそっちのほお袋娘にどーぞ」
「ほいひは! ……ん、んぐ、ごくん――。アンタ! いたいけな美少女が体調崩して弱ってるってゆうのに、一肌脱ぐ器量もないっての! この狭量! 非情者!」
「や、だから人肌脱いでんじゃん。このパン」
さすがに志田に「生理で弱って」とは言えない。
――てゆうか、美少女とか言うな。
……にしても、こんにゃろう。
上手いこと言って目の前に広がるこのパンの山から、一体どの程度を私が食べられるって言うんだ。
……食欲だってなくなってるのに。
完璧テメー、自分で食う気満々じゃねーか!
……なんてつっこむ元気もない。
「まったく、いい性格してんな。キミのご友人は」
「私のためなら粉骨砕身《ふんこつさいしん》なんだって。あはは……」
「砕くんなら自分の骨にしてもらえると、ありがたいんだがなー。オレとしては」
苦笑いし合いながら、美智が食い尽くしてしまう前にひとつパンを手に取る私たち。
「美智。ってゆうかアンタお弁当は?」
「何言ってんの! そんなの部活の後に、ひうはえほふえふ!」
喋りながら食べるな。
お行儀が悪い。
普段私の身支度にはうるさいくせにコイツは……。