無意確認生命体
25.
その日の放課後。
志田はああ言ったが、私はまっすぐ家に帰るわけにはいかなかった。
今帰ったらおじさんたちと鉢合わせる。
それじゃあ、わざわざ無理をしてまで学校に来た意味がない。
多少目眩を覚えつつ、私は花壇へ向かった。
案の定、志田は私を見て呆然とした。
だって、どう考えたって今の私は部活動なんて出来るような状態じゃない。
志田だって、当然私は直帰するものだと思っていたに違いない。
――実際私は、こいつから忠告を受けていたわけだし。
「おい! なんで来たんだよ!」
「……あ、歩いて?」
「アホ! ボケてないで、さっさと家帰れって! 全然回復したって感じには見えんぞ!?」
「ううん。ちょっと横にならせてもらったら、大分ましになった」
「どこら辺が? オレにはわからんけど。ほれ! 早く帰らんと、マジでぶっ倒れるぞ?」
あはは。出来れば私もそうしたいよ。
私がしばらくの間、何も答えられずに黙っていると、志田は「ふー」と溜息をついた。
「なんだ? 帰りたくない理由でもあんのか?」
志田は、抜けているけど馬鹿じゃない。
私の反応を見ていて、すぐに何かあると察しがついたみたいだ。
「……まぁ、ちょっと」
「ならソレを言え。それでオレが納得するようならな、今日は特別、見学だけなら許してやらんでもない」
……言って納得するわけない。
そう思ったが、こいつに隠したところで得することが何にもない。
無理に帰されるくらいなら、事情ぐらい話してもいいかな。