無意確認生命体
「ふいー、よーし。終わり! ん? なーんだ、結局倒れなかったじゃん」
なんだか嬉しそうに皮肉をたれる志田。
今日の彼はひとりで作業していたので、いつもよりいくらか時間が掛かっていた。
「あはは。うん。保健室で先生にもらった薬が効いてきたみたい。ホント、もう大丈夫だから」
「ほー。そんなんあるんだ? 用意周到だな保健医。ん、どうだ? 歩けるか?」
「うん、平気。ご心配おかけしました。――さ、それじゃ部室、行こっか」
私は立ち上がって、旧校舎に向かって歩き始める。
「うぃ! お、おいおい雌舞希よ。わざわざ片付けにまで付き合わんでもいいぞ? もう無理すんな。親戚連中も、もう帰ってる頃だろ?」
慌てて私に駆け寄る志田に私はふり返り、その左手を指さして言う。
「それ。左手。多分無意識だったと思うけど、今日結構使ってたよ? 救急箱、部室にしかない。それとも、アンタが代わりに保健室行く?」
「う、それはいやだ。……わかった。……ホントに、大丈夫なんだな?」
「あのね。これ以上アンタに心配掛けるようなこと、出来るわけないでしょ? ホントに大丈夫だってば。それにこれ、私が暗に今日の恩返しがしたいって言ってんの。察しなさい」
志田はポカンと間抜けな顔で私を見た。
「恩返しって?なんの?」
私は呆れ、
「いいから、とっとと行くぞ! 志田部長!」
と、志田の首根っこをふん捕まえた。