無意確認生命体
志田は何故か、医者と名の付く者に掛かるのを異様に嫌った。
理由を訊いても、
「嫌いなもんは嫌いなんだ。キミは、ゴキブリが嫌いな理由を具体的に説明できるか? "汚い"、"不潔"とかはナシだ。彼らのせいで我々が如何なる損害を被っているか、明確な説明が出来んのか?」
なんて屁理屈を言うだけだった。
驚いたことに、私にガラスを刺された後も、志田は医者には掛かっていなかった。
それどころか、こいつが保健室に行って自分で行った処置は、消毒もしないでただ止血し、ガーゼを当てて包帯を巻いただけ、というお粗末なものだったというのだ。
バイ菌が入ったらどうするんだ!
……自分でやっといてなんだが……。
だから私は、例の『部室』に救急箱を持ち込んで、志田の左手の手当てをするのに使うようになっていた。
自分で付けたという自責もあり、部活が終わって園芸道具を片付けに屋上へ上がった際に、私がこいつの傷の手当てをして包帯を巻き直すのは、今では日課となっていた。
――幸い、私はこの手の傷の手当てには慣れていたし。