盗撮教師日記
部活にいくとさっきまでうるさかった部活内が一気に静かになった。

しゃべり声が聞こえるから廊下から聞こえるのだ。

それを知らない振りして、もしまた同じようなことがあったらミーティングということにしとこう。

今日の分は、おまけに。

「山岸先生!!天海さんのご両親がお見えになっています」

「分かりました。すぐに行きます」

私は、生徒に卓球を指導しているときの声のトーンより少し低めで返事をした。

そして、応接室へと向かった。

ドアを開けると天海の両親が座っていた。

私に気が付くとあいさつをしてくれた。

「あっ先生……いつも静香がお世話になっております」

「いえいえ。で、今日はどんなご用件で」

両親の前では、いつも笑顔でいるのが教師の掟。

簡単に言えばご機嫌とりみたいなものだ。

「あのですね、今年の夏休み明けに静香をスイスに留学させようと思いまして。主人が転勤でスイスに行かなければならないので家族で一緒に行った方が良いじゃないかと思いましてそのことについて先生にご挨拶に参りました」

天海の両親は、天海同様丁寧で礼儀正しい人たちだった。

やはり、親子というのはにるものなのか。

「その話は、もうすでに静香さんのほうからお伺いしています」

「えっ?静香がですか?」

「はい。留学するのは、嫌だと。多分、気持ちの整理が出来ていないんでしょう」

「静香が……」

天海のお母さんは、泣いていた。

娘が自分が思っている以上に留学について深く考えていること。

そして、まだ娘が自分の気持ちに整理が付いていないまま親がガヤガヤ言っているから辛いということを知ったのだと思う。

「山岸先生。お願いがあるんですが……静香をどうぞよろしくお願いします。学校での生活態度を色々と教えてください。静香は、私達にあまり心を開いてくれないものですから」

天海のお父さんが代わりにお願い事をした。

両親の前では、心を開かない天海を助けるのか。

しょうがない。

少しだけ助けてあげよう。

「分かりました」

そして、私は夏休み前まで天海の行動を観察し、少しずつ心が開いてもらおうと努力をした。


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