盗撮教師日記
翌日、私は職員室に入らずそのまま校長室へ。

私は、校長に辞表を出した。

昨夜、数時間かけて作り上げた辞表だ。

校長は、辞表をそっと机の中に入れた。

「もう、後悔しても遅いですから。お疲れ様でした」

「はい。ありがとうございます」

「お父様にはお会いになるのですか?」

「まぁ…。父に会ってもう一度教師というものは何かを教わってきます」

私は一礼して、校長室を出て行った。

重い足をゆっくりと動かしながら、校舎を出て中庭を静かに通る。

その時だった。

「山岸先生」

私は、後ろを振り向いた。

すると、そこには石垣光を先頭に続々と2年1組の生徒達が駆け寄ってきた。

「なんですか?あなたたちは。もう授業始まってるでしょ」

「先生こそ、HR休んでどこへ行くんですか?出て行こうとするなら、勝手ですが忘れ物だけはしないでください」

相変わらず、光はクールに喋るとデパートの紙袋を渡された。

「これは、なんですか?」

「先生が、僕達の家に仕掛けた隠しカメラ26個全員分です。プライバシーがかかってるので、絶対中を確認してデータを消して処分してくださいね」

「ありがとう。では……」

私は、再び前を向き直進した。

誰も青春ドラマのように「先生っ」と後ろから声をかけては来なかった。

コレが、現実である。

でも、何も言わない生徒達の思いはこのあと知るとは予想もしていなかった。

私は、ただひたすら前へ前へと歩き続けた。

バスへ乗り、向うは父の元へ。

バスに乗って紙袋の中を見てみた。

そのなかには、1つの封筒が入ってあった。


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