盗撮教師日記
職員室に入ると新任の先生以外は、私を冷たい目で見てくる。

私は、気にせず去年座っていた席に座り荷物をならべ校長室へと向かう

―――コンコンッ

「はい、どうぞ」

「失礼します」

私は、会釈をして校長室に入った。

「今度がラストチャンスですよ、山岸先生」

「はい、そうですね。生徒たちの思いをしっかり受け止めていきたいと思います」

「お父さんの所にはいかれましたか?」

「はい。やはり、父に会うと初心に戻ります。校長先生、いろいろとありがとうございました」

私は、ほほ笑んだ。

校長も同じように微笑む。

「はじめて、あなたの笑顔を見ましたよ。うれしいですね。生徒たちが待っています。3年1組に行ってあげてください」

「はい」

そういって、私は校長室を出て行った。

出席簿を持って3年1組へと向かう。

深く深呼吸をして、教室に入る。

生徒たちは、しっかり席について私の方を見る。

石垣光以外は、みんな私を見て微笑んでくれた。

『先生、お帰り』

「ただいま」

私は、ほほ笑んで教卓の前に立った。

生徒たちは、少し成長した感じがした。

私は、ひとりひとり出席を取っていった。

みんな、あのころとは違ってしかり返事をしていた。

出席を取り終えると私は、出席簿を教卓の上に置き私は黒板にある言葉を書いた。

【人間らしさ】

「この言葉を私は、うっと求め続けてきました。2年のときにあなた方にこの言葉の意味をプリントに書いてもらったのを覚えていますか?」

生徒たちはうなずく。

「あの頃の私には、人間らしさというものは何もなかった。あなたたちから教えられてやっと気づいた。この学校を離れて冷静に考えてきました」

そういうと、私はほほ笑んだ。

「私が考えて出てきたものは……笑顔です。人間、どんなときも笑顔でいられればきっと幸せは来る。そう信じました。その結果、今私はここにます」

私は、そういうと光と目が合った。

≪あなたに笑顔という言葉が出てきたのは意外です≫

と顔に書いてあるようだった。

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