キミの嫌いなところ
三年も付き合っていれば、この程度のことには驚かない。
驚きはしないけど、毎度のことながら腹を立てるのは、何故か毎回私が負けたような気がしてならない。
でもやっぱり腹が立つ。
三つ年上の彼は、もう立派なアラサーで、それでも出会った頃はまだ、青年と大人のちょうど間くらいの初々しさがあった。
友達の彼氏の友達。
出会いはありがちで、特別なことなんて何もなかった。
ただお互いに最初から恋愛対象だったのかと言われると、それは違う。
少なくとも私は。
「絶対に俺の方が幸せに出来る自信がある。根拠はないけど」
彼氏に殴られた左頬を氷で冷やしていると、そんなことを言ってきた。
当時私は、今思えば、どうしようもない男と付き合っていた。
本当に、今思えば、なのだ。
恋愛というのは麻薬みたいなもので、好きになった相手に何をされようと、許せてしまうのだ。
だから馬鹿な私は何度も浮気を許してきたけれど、さすがにあの日だけは許せなかったのだ。
私の友達に手を出した彼に攻め寄ると、次の瞬間には左の頬が熱くなった。
殴られた、とわかるまで数秒かかったが、その数秒で一気に麻薬から解放された気分になった。