海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
学校から自宅に戻ると、いつも通り家族と食事をし、お風呂も済ませてから自分の部屋に入った。


私はどちらかと言うと気にしやすい性格で、特に一人になると、その時気掛かりになっている事ばかりを考えてしまいがちだった。


この日もお風呂に入っている時から、聞きたかった事を聞けないまま、学校を出てしまった事を後悔をしていた。


他の先生がいる前じゃ絶対に聞けないけれど、


『勇気を出してその前に聞いておけば良かった。』

心の中はそんな後悔ばかりだ。


『今更、どうしようもない。』

何度そう思っても、心の中は晴れそうに無かった。



「…」


しばらく悩んでから、私は電話を手に取ってベッドに上がると、

壁を背もたれにしてクッションを抱え込み、体育座りをするように膝を立てた。


「よし!」


自分に気合いを入れると、もう既に暗記してしまった電話番号のボタンを押した。


プルルルル…

プルルルル…

プルルルル…



3度目のコールが終わった時、

「はい、相葉です。」

と、相葉先生が電話に出た。


その声を聞いた瞬間、直接会って話している時以上に“ドキン”と心臓の音が大きく鳴ったように感じた。


前にも電話をかけたけど、その時の緊張感と全然変わっていない。



『慣れる日なんて来ないかも。』

そう思いながら、


「も、もしもし、河原です。」

と、私は一生懸命に話し始めた。


「河原?どうした?」


相葉先生の声のトーンから、前のように驚く事無く、自然な雰囲気で話しているような気がした。


「あ、あのっ。聞きたい事があって…。」


“胸のドキドキ止まれ”

何度もそう、心の中で繰り返した。


どうしてだろう。

相葉先生と話したり、一緒にいる時は、どう頑張ってもドキドキが治まらないんだ。
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