海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
相葉先生は一呼吸置いてから、

「…どうも…思ってないよ…。」

そう、ひっそりと答えた。


先生の返事はある意味、予想通りの悪い返事で、そして予想以上に冷静な返事だった。


だけどこの時の私は先生の心を繋ぎたくて必死だったから…

冷静な相葉先生とは反対に、どうしようもなく取り乱していた。


「でもっ、私は先生の事が好きなんだもん!すごく好きだから…だから…っ」


感情が高ぶって、言葉に詰まった私の想いはただ一つ。

先生が好きで好きで、どうしようもないってことだった。


「気持ちはよく分かったよ、ありがとう。でも…河原の気持ちに応える事は出来ない…。」


相葉先生は自分の本心を伝えながらも私をなだめる。


「どうして?私が生徒だから?」


先生の言葉を聞いた途端、とうとう涙が零れ始めた。

本当は、いつ泣き出しても不思議じゃなかった。


「…それもある。」


相葉先生は少しだけ困ったように答えた。

そんな先生の返事に引っ掛かった私は、感情に任せて心の中のわだかまりを吐き出す。


「お土産にバッグを買っちゃうような人がいるから?」


相葉先生は一瞬黙ると、


「まぁ…河原も年相応な相手を好きになりなさいって。」


私が感情のままに吐き出した言葉に惑わされる事無く、

まるでグズる子供をなだめるように、穏やかな口調でそう言った。


「…やだ。」


私は子供みたいな返事をする自分が恥ずかしくて、泣きながら少しだけ笑った。


先生もつられてクスッと笑ったような気がした。


呆れられたのかもしれない。


まさに“失笑”ってやつだと思う。
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