海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「年相応な人を好きになりな?」

相葉先生はもう一度そう繰り返したけれど、


「…先生がいい。」

と、私は鼻をグズグズさせながら必死に食い下がる。

この時の私には、本当にこれが精一杯だった。


「それは…できない。」

「先生じゃなきゃいや。」

「…」


お互いちっとも譲らない、同じやり取りの繰り返し。


平行線を辿るやり取りに、相葉先生が溜め息をついた気がした。



『嫌われたかもしれない…。』


こう思った時、私は初めて冷静になれたのかもしれない。



「河原…悪いけど忙しいんだ。お前も早く寝ろよ?」

「…」


“突き放された”

そう感じて、私は何も言葉を発する事が出来なかった。


「…また明日学校でな?」

「今すぐにでも会いたいよ…。」


涙でグシャグシャになりながら答えたから、受話器を通しても分かる位の涙声だっただろう。


そして多分、今の私には出来ない位、素直な自分の気持ちを相手にぶつけていた。


自分の諦めが悪い事はよく分かっていた。


そんな私の話を出来る限り聞き、言葉を選んで答えてくれた相葉先生は、やっぱり大人で、優しい人で…


『この人を諦めることなんて出来ない。』


そう感じて私は余計に切なくなった。
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