海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「明日また会えるだろ?」


相葉先生の優しさが私の心を苦しくする。


時に優しさがこんなに切ない気持ちにするっていう事を、

私はこの時、初めて知った。


「…じゃあ…また明日な?」

「…」


遠慮がちな相葉先生の言葉を聞きながらも、私はどうしても電話を切れずにいた。


先生と私の間にあるかもしれない見えない糸が、電話を切ったと同時に永遠に途切れてしまうように感じていた。


「…おやすみ。」

「…おやすみなさい…。」


搾り出したような小さな擦れ声で答えると、


「…おやすみ。」


相葉先生の二度目の“おやすみ”で、静かに電話が切れた。


ツーツーという終話を告げる音が聞こえているのに電話のボタンが押せない。


受話器を握り締めたまま、込み上げる涙を止められずにいた。



先生を困らせる私。

駄々をこねる、子供な私。

そんな私とは違って、お似合いな大崎先生の存在。

私の気持ちは拒むけれど、優しい相葉先生。

好きで好きでどうしようもない人が学校の先生で、自分は生徒だという事…。



私は色んな想いを抱えてベッドに横になると、リビングにいる両親には聞こえないように枕に顔を突っ伏して泣いた。


子供で非力な私には、泣く事しか出来なかったんだ。
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