海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
2度目の玉砕を経験した翌朝の目の腫れ方は、前回以上だったかもしれない。


「おはよう。」


挨拶をしながら私の顔を見た母は、一瞬ギョッとしてから


「…大丈夫?」

と、眉をひそめて一言だけ声をかけた。


「大丈夫…。」


恥ずかしさから、私はまともに母の顔を見る事ができなくて、素っ気ない返事をした。


『心配してくれたのに、お母さんごめんね…。』


母に背を向けて、心の中でそう呟いた。


低いテンションのまま学校に行くと、予想通り瑞穂と梢の質問攻めにあい、

二人にはパレードを見ながら告白したことも、昨夜の電話のことも全部を話した。


私の話を聞き終わると、


「さくは凄いね。」


そう、瑞穂が言った。


「私もそう思う。」


続いて梢も…。



「…どうして?」


私は首を傾げて微かに笑った。


『こんな私のどこが凄いんだろう。』

そう、思ったからだ。


「だって、相手はなかなか手が届かない人で、彼女らしき人も知っているんだよ?一度は失恋してるのに、その人にもう一度自分の気持ちをぶつけるんだよ?怖くてなかなか出来ないと思うよ…。」


そんな梢の言葉を聞きながら、

瑞穂は“うんうん”と頷いて、そっと私の頭を撫でると、


「頑張ったね。」


そう言って、悲しげに微笑んだ。

その瞬間、私は胸が熱くなるのを感じていた。
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