海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
私にとって過酷な一日を終えて自宅に戻った頃には、心身ともにグッタリしていた。


前日、よく眠れなかったせいもあるけれど、

“しんどい”

この一言に尽きる。


私は情緒不安定になっていたのだろうか。


『諦める事が出来ないなら、頑張るしかない。』

そう思いながらも、


『うまくいかない辛さから逃れたい。』

という思いも、ずっと心の中にあった。


ちょっとでも弱気になれば、


『相葉先生の事を諦めることが出来たら、どんなに楽だろう。』


『どうしてこんなに好きになっちゃったんだろう…。』


という気持ちに支配されてしまいそうだった。



何かに縋りたかっただけかもしれないけれど、


『現実から逃げないで、自分が出来る事をやろう。』


そう思って、自分を奮い立たせるかのようにワープロの練習を始めた。


ワープロの検定試験は、冬休み前にある。


同じく冬休み前には、相葉先生の誕生日もある。



「合格おめでとう。」


相葉先生に、そう言われたい。


そして、


「誕生日おめでとう。」


私からその言葉を贈りたい。


強い自分と弱い自分を何度も繰り返し、不安に揺れながら…


“相葉先生”という温かな光に向かって、は必死に手を伸ばしていた―…
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