海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
―――――…

3人で買い物に行った数日後、ワープロ検定の日がやってきた。


私は前回同様、自分のワープロを持ち込む事になっていたので、パソコン教室の準備室にいる相葉先生を見つけると


「先生、場所は前と同じですか?」


そう言って、バッグに入れたワープロを相葉先生にちらりと見せた。


「うん、そうだな。」


振り返った相葉先生が肩越しに頷いたので、


「分かりました。」


私はそう答えると、教室の中にある長い教卓の一番端の方に持っていたワープロを置いた。


『前に先生がコンセントを差していた場所って確かこの辺だったはず…。』


前回の事を思い出しながらワープロのコンセントを差して椅子に座った。


本当に小さな事だけど、相葉先生の負担にならないように自分の力で出来る事を誇らしく感じていた。


けれど、座ると自分の目の前に他の生徒がズラリと並んでいる光景には2回目でも緊張し、慣れる事が出来そうにない。


前回は全員先輩。

今回は半数が先輩で、残りの半数は私と同学年の生徒。


『前よりはマシか…。』


その考えは甘かったのかもしれない。


目の前には先輩達が座っていて、向かって右側の少し離れた場所に私と同じ年の子達が座っている。


聞こえてくる事はやっぱり前回と同じで、


「どうして河原さんだけ自分のなの?」


そう、言っていた。


全員先輩じゃない事に安心していたのも束の間、今度は同学年の生徒にまで敵視され始めたような気がした。


気が滅入りそうになった時、


「そろそろ始めるぞ!」


タイミング良く、問題を持って私の後ろをすり抜けて教壇の真ん中に立った相葉先生が全体に声をかけた。


相葉先生から差し出された問題を受け取ると、私は大きく息を吸い、


『後は今まで通りにやるだけ…。』


集中する事だけを考えて、ゆっくりと息を吐きだした。


そして先生の合図と同時に検定試験が始まった。
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