海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「先生、今年もお世話になりました。また来年も宜しくお願いします。」


そう言ってペコリと頭を下げると、相葉先生は笑顔で


「河原はよく頑張ったもんなぁ。また来年も頑張れよ?」

と、励ましてくれた。


「はい、頑張りまーす。」


私は前向きな気持ちで返事をしていた。


この一年、勉強も恋も全力で、今までこんなに頑張ったことはなかったと思う。


もちろんこの先も、それを変える気持ちはほんの少しもなかった。



「休み中、気をつけて楽しめよ?」


本の整理が終わった様子の相葉先生に、


「分かりました。」


私はそう返事をしてからドアの方に行き、


「先生、来年も仲良くしてねっ!さようなら!」


思い切ってそう言うと、相葉先生に向かって笑顔で手を振った。


それは私の願いにも等しい言葉。

何回もフラレたけれど、私に笑いかけてくれる、優しくて穏やかな今のままの相葉先生でいて欲しいって思ってる。


そう思うのは、私のわがままなんだろうか。


「おぅ。さようなら、気をつけてな!」


相葉先生も笑顔で私を見送り、その笑顔を見た瞬間、


『しばらく会えないんだ…。』


改めてそう感じると本当に寂しかったけれど、最後に見た相葉先生の笑顔を目に焼き付けて、私はドアを閉めた。


閉めた途端に相葉先生に会いたくなる位、寂しかった。



それからロビーにいる瑞穂と梢の元に駆け寄り、私達は学校を後にした。


3人で正門に向かって歩いている時、


『相葉先生…。』


相葉先生の事を想いながら振り返り、肩越しに校舎をみつめた。


新しい年を迎えるまで見る事はないであろう、その校舎を…。
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