海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
終業式を終えて帰宅した後も、決して寂しさは消えなかったけれど、

帰り際に立ち寄った時の相葉先生は忙しそうで、あれ以上長居するのは迷惑になったと思う。


すごく寂しいけれど仕方がない。


『私が“生徒”である以上、長期休暇があるのは仕方がない事。』


そうやって自分を納得させた。




この年のクリスマスは家族と一緒に過ごすクリスマスとなった。


私にとって家族で過ごすクリスマスはよくある事だったから、寂しくも恥ずかしくもない。


私達3人の中で唯一彼氏がいる梢だけが、彼氏と過ごすって言っていた。


瑞穂も私と同じく家族で過ごすらしい。


つい先日聞いた話では、瑞穂にも気になる男の子がいるけれど、


「デートの約束が出来なかった。」

と、残念そうに言っていた。


その彼は他の学校の男の子で、私はまだ一度も会った事がない。



「さくー!ごはんよー!」

「はーい!」


階段の下の方で私を呼ぶ母に聞こえるように、私は大きな声で返事をした。


家族で過ごすクリスマスはいつもよりも豪華な料理をみんなで食べて、楽しいテレビ番組を見ながら過ごした。


ただそれだけなんだけど、とても温かくて楽しい時間を過ごせた。


家族の温かさで相葉先生に会えない寂しさや不安が紛れていたのかもしれない。


少しでも油断すると、


『相葉先生はどんなクリスマスを過ごしているんだろう。』


と、考えない方が良い事に意識が飛んでいってしまいそうな私には好都合だった。



クリスマスが過ぎると、街はあっという間にお正月の雰囲気に変わる。


『お店の人達は大変だろうな。』


高校生の私でもそう感じる程の変化だ。


私は投函の締め切りが過ぎてしまった年賀状を急いで書き上げると、寒空の下でポストに入れた。


もちろん相葉先生にも。


『返事が来ますように。』

そんな微かな願いを込めて、ポストの前で手を合わせた。
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