海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
私の趣味はお菓子作りで、シュークリームとベイクドチーズケーキには、ちょっとだけ自信がある。


『もしも先生が甘い物好きだったら、今度食べて欲しいな。』


そう、思っていた。


だから先生が甘い物を食べると聞いた途端、


「ふーん、そっか。」


そんな素っ気無い返事をしつつも、単純な私は嬉しさが込み上げるのだった。

当然表情にも出てしまう。


反対に、私が一人で喜びに浸っていても相葉先生は至って冷静で、


『一体、なんの事やら…。』


とでも言わんばかりに、フーッっとたばこの煙を吐き出しながら、黙ってこちらを見ていた。


その様子に気付いた私は、途端に言葉が出なくなって、居心地の悪い、沈黙の空間になってしまった。


「……」

「……」


この空気に耐え切れず、


「じゃ、じゃあ、先生!ありがとうございましたっ!」


逃げるようにお礼を言うと、ペコリと頭を下げた。


「おぅ、気をつけて帰れよー。」


そう言って、相葉先生は沈黙なんて全く気にしていなかったかのように、優しく笑ってくれる。


私にとって相葉先生は、温かい陽だまりのような存在で、見つめるだけでドキドキと胸を高鳴らせる、特別な人だった。


『ずっと先生の傍にいられたら、どんなに幸せだろう。』


私は心からそう思っていた。
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