海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
『琴美も相葉先生の事が好きなのかも…。』


そう思い始めてから約2週間位経った頃。

それは、加奈子の態度にも、琴美の行動にも、本気で耐えられなくなってきた頃だった。



私の心の中で固まった決心は、


“事実が知りたい”


という事だった。


この、いつも嫌な気持ちにさせる“不安”を払拭する為には、事実を知るしかないと思っていた。


琴美に直接確認して


『琴美は相葉先生の事が好きなんだって、勘違いしていた。』


そんな風に笑い話にしたかった。

そうなって欲しいと願っていた―…



夕飯を済ませてから自分の部屋でしばらく悩んだ後、私は電話を取ると、以前もらった住所録に書かれている電話番号通りにボタンを押した。


プルルルル…

プルルルル…

プルルルル……


数回の呼び出し音の後、


「はい、井上です。」


電話に出たその声は琴美本人だったらしく、


「もしもし?河原と申しますが…」

「あ、さくちゃん!?どうしたの!?」


私がまだ言い終わらない内に“私”だと気付いた琴美が喋り始めた。


とても明るく、元気に。


今までずっと仲良くしていたけれど、こうして電話で話すのは実はこの時が初めてだった。


そのせいか、私は妙な緊張感を感じていたけれど、その“緊張感”は初めて電話をかけた事によるものではなく、


自分がこれから聞こうとしている事の答えが怖かったのかもしれない…。



「うん…あのね、ちょっと琴美に聞きたい事があったんだ。」


私はゆっくり、言葉を選びながら話し始めた。



「うん?」


いつもと同じように穏やかに問い掛ける琴美に、


「あのね…あの…ね…。」


いつになく、口ごもる私。

そんな微妙な変化によって、


「…どうしたの?」


これから私が“何か言いにくい事”を話そうとしている事を、琴美は察したようだった。
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