海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
琴美はいつものようなふざけた感じではなかったし、


私はこの質問の結末によっては、


“大切な友達を失うことになる”


という事を分かっていた。


それ程の予測をしていた分、十分に考えてから電話をかけたのだけれど、


それでも…


口ごもりながら、本当は最後の最後まで迷っていたんだ。


私は“琴美の気持ち”を聞くべきなのかどうかを…。



心臓をバクバクいわせながら唾を飲み、それから一息ついて私は心を決めた。


「琴美は相葉先生の事、どう思ってる?」

「え…っ。」


琴美のたった一言で、私の唐突な質問の内容に戸惑っている事が伝わってくる。


驚くのも無理はない。


突然電話してきて、いきなりこの質問だったのだから。



琴美は少し黙ってから、


「あぁ…。」

と小さな声で呟き、


「うん、好きだよ…。」

そう、ハッキリと答えた。


「そっか…。」


私はそう返事をしながらも、心の中で願っていた

『私の勘違いでありますように』

という、自分に都合の良い願いが見事に消え去り、

多分もう、この電話を笑い話で終わらせる事なんて出来ないだろうと思っていた。


「さくちゃんも好きなんでしょう…?」

反対にそう問い掛けてきた琴美に対して私が、


「私も相葉先生が好きなんだ。」

と答えた事により、


『私は友情よりも恋を選んだんだ。』


そう思うととても胸が痛かった。

本当は私にとってどちらも大切だったのだから―…
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