海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「…そうじゃないかなって思ってた。」

琴美はそう言って、少しだけ笑った。


琴美も私の気持ちに気付いていて、私と同じように友情よりも恋を選び、

それ位、真剣に相葉先生を想っているっていう事を、私に伝えているのだと感じた。


「琴美は本気で好きなんだよね…?」

「うん…。」

琴美は私が感じたままの問い掛けに答えると、


「さくちゃんもなんだよね…?」

と、聞き返してきた。


私の返事は決まっていた。


「うん、本気で好きなんだ…。」

「そっか…。」


琴美の返事を最後に、私達の間には暫くの沈黙が続いた。


きっと、ほんの数秒だったんだろうけど、その時間はすごく、すごく、長く感じた。



「そっかぁ…ライバル宣言かぁ…。」


琴美が少しだけ笑いながら呟く。


「ん…。」


私はつられて小さく笑っただけで、返すべき言葉がみつからずにいたのだけれど、


「告白はしないの?」


そう、つとめて明るく問い掛けた。

こうして明るく振舞ったのは、例え悪あがきだったとしても、


“友情を壊したくない”


そんな微かな願いによる行動だったのかもしれない。


例え無駄になったとしても、せめて友情を繋ぎとめられるように最後の抵抗がしたいと無意識の内に思っていた。
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