海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
テニスをしようと校舎から出てきた大崎先生の冷たい視線を受けて、


『大崎先生は私の相葉先生への気持ちを知っている。』


そう感じたけれど、本当はもっと前から私と大崎先生との間には冷たい空気が流れていた。



それは1月の事だった。


長い冬休みの途中で、どうしても相葉先生と話がしたくて電話をした時の事だ。


先生に電話をすると話が出来た時もあったし、留守の時もあった。


相葉先生が留守だった時、何回か留守電にメッセージを残した。



「河原です。また電話します。」


残したメッセージの内容がそれだけの時もあれば、


仕方なく、その時伝えたかった事を、留守電が「ピーッ」と終わりを告げるまで吹き込んでしまった事も。


なんとなく違和感を感じたのは、冬休みが終わり、学校が始まってからの事。


元々、大崎先生とは頻繁に話をしていた訳ではないけれど、それまでは割とにこやかだったのに段々笑顔がなくなってきた事に気付いたのだった。


もちろん、特別な嫌がらせとかはないけれど、何となく敵視されているような気がした。


多分、気のせいなんかじゃなかった。



私は『相葉先生に対する私の想いを知ってるのかもしれない。』と感じ、


逆に大崎先生は、『河原さくの想いが、一時的な憧れや興味本位なものではない。』という事を悟ったのだろう。


私はそう、解釈している。



大崎先生が私の想いを知るきっかけがあるとしたら、その頃の電話以外に思い当たる節がなかった。


もし、校内で相葉先生の所に通っているだけだったら、“単なる憧れ”で済まされていたのかもしれない。


大体、生徒が教師の自宅に電話をかけるなんてそう滅多にない事だろうから。



『大崎先生は、どんな気持ちで私を見ているのだろう。』


自分に余裕なんか全然無かったけれど、時々大崎先生を見ていてそんな風に感じた。


そんな時、ライバルである加奈子によって、私が衝撃を感じるような出来事が起きたんだ。
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