海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
下駄箱で靴を履き替えて玄関を出ると、やはり外はパソコン教室の中で見た通り薄暗くなっていて、陽が落ちるにはまだ少し早い時間のような気がしていた。


そして学校の正門を出てしばらくすると、車で相葉先生が私の横を通り過ぎて行った。


通って行く時、相葉先生は軽く手を上げて私を見た。


「先生!」

そう言いながら、私も笑顔で手を振り返した。


たったそれだけでとても嬉しい気持ちになれたけど、先生の車が大きな通りで左折し、見えなくなってしまった事で寂しさを感じた。



私はいつもの道を歩いていた。


だけどこの日は途中から、どうしても相葉先生のアパートに向かって歩きたくなっていた。


相葉先生の車を見えなくなるギリギリまで見送っていたからかな。

もう一度、相葉先生の存在を感じたかったんだ。


私は自分の気持ちが思うまま、先生のアパートの方に向かって歩き始めた。


加奈子の事でショックを受けていた直後に、相葉先生のアパート前で大崎先生の車を見かけたりしたら、更に落ち込むのかもしれないけれど。


だけど、その時はそんな事はどうでもよくなっていて、自分の思いのままに行動したいと思っていた。


私にショックを与え、戸惑わせた加奈子の行動が、自分でも知らない内に大きな原動力になっていたのかもしれない。
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