海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「それは違う…。」


相葉先生はしばらく間を置いた後、躊躇いがちに答えた。


「じゃあ、どうしてダメなの?全然分かんないよぉ…!」


先生はどうして抱き締めたの?

どうして?

どうしてなの―…!?


「先生、私の事好きじゃないんでしょう!?」

「理由は言えない。河原の気持ちにも応えられない。ごめん。こんな中途半端で、ごめん…。」


そう言って、泣き出した私を相葉先生は更に強く抱き締めた後、俯いたままゆっくりと私の体を引き離し、


「俺の事はもう、忘れるんだ…。」


そう言って、私と先生の間に落ちていたタオルでクシャッと私の頭を包んだ。


相葉先生の表情は見えなかったけれど、タオル越しに先生のおでこが当たっているのを感じていた。


無意識に私は相葉先生の服の裾を掴んでいた私は、1秒でも長く、相葉先生から離れたくなかったんだ―…


「河原、ありがとうな…。」

「せん…」

「制服、持ってくる。」


相葉先生は私の言葉を遮り、服の裾を掴んでいた私の手を離して立ち上がった。


私に背を向けた相葉先生の姿が余計に私を悲しくさせた。



相葉先生がどうして抱き締めてくれたのか。

どうして応えられないと頑ななのか。

その本当の理由は何なのか。

相葉先生の本心はどうなのか―…


沢山の疑問が、次から次へと私の頭の中を駆け巡る。


だけど、


『相葉先生の温もりが残ってるのに、先生の事を諦めるなんて絶対に出来ないよ…。』


決して変わる事がない溢れる想いと一緒に、私は涙を流していた。
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