海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
相葉先生の家に行った、雨の日の翌日。


「38度2分…。」


翌朝、ベッドで横になっていた私が体温計を取り出して見てみると、相葉先生の気遣い空しく、すっかり熱を出していた。


先生から暖かくして過ごすように言われていたから、その通りにしていたつもりだったけれど、相当体が冷えていたらしい。



『相葉先生、色々お世話をしてくれたのにごめんなさい…。』


心の中で先生にお詫びをしていた時、




「熱、何度だった?」



タイミング良く、ドアをノックして母が入ってきた。


はい、と体温計を渡すと「あらら…」と驚いてから



「今日は学校休みなさい、電話しておくから。」


そう言って、母は部屋を出て行った。


部屋を出る前に「何か食べる?」と聞かれたけれど、私は「いらない」と断った。


体調が悪かった事もあるけれど、胸がいっぱいで食べられなかったんだ。



私は昨日の晩からずっと、熱に侵された頭で昨日の事ばかりを思い返していた。


熱で夢うつつだったのか、それとも本当に考えていたのかは曖昧だけど。



朦朧としながらも脳裏に浮かぶのは、



電話ボックスの前に立っていた先生


相合傘で並んで歩いた先生の横顔


ブカブカなジャージとTシャツの感触


部屋の中で聞こえた雨の音


髪を撫でながら真剣な表情で私を見つめた、メガネの奥の先生の瞳


私を見つめながら頬にあてた先生の手の温もり


死ぬ程大きく高鳴った、自分の心臓の音…


私を抱き締めた時の先生の温かさと香りが、まだ私の体に残っているような気がした。


そして、その時の事をリアルに思い出して、体がほうっと熱を帯びたのを感じた。
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