海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
そんな時、相葉先生が


「河原は就職だっけ?」と聞いてきた。

「うん、そうだよ。」


私の返事を聞いて、相葉先生は「そっかぁ…。」と言いながら “うんうん”と頷いた。



「けど、全然就職の話が来ないから、もしかしたら私、就職出来ないかも…。」


私が思わずポロッと零したのは、心の中にずっとある不安な気持ちだった。



相葉先生は、


「河原ならもうすぐ話がくるだろ。頑張れ!」

そう言って、励ましてくれた。



父や母の励ましも嬉しかったし、


瑞穂や梢の励ましも嬉しかったけれど、


やっぱり、相葉先生の励ましの言葉が一番嬉しくて、心強く思えた。



私の努力やその成長を誰よりも一番に見ていてくれていた人は相葉先生だと思うし、


何より、好きな人からの言葉は、特別なんだなって思う。



…とは言っても、


その時は恋も就職もどうにもならない、八方塞がりな状態。



『とにかく、今出来る事を頑張ろう』


いつか努力が報われる事を信じて、学校が終わった後のパソコンと電卓は一度も休む事なく通った。



学校の成績も落とす訳には行かないので、試験勉強、特に商業系の簿記やワープロも今まで通りに練習していた。




パソコンと電卓のスクールに資格取得の為に通い始めて…


12月。


私がパソコンの表計算2級、電卓1級に合格した後の事だった。




「3年E組の河原さくさん。至急、職員室まで来て下さい。」



昼休み中、校内放送で学年主任の先生から呼び出しがかかった。


これは就職説明会の時に教えられていた“就職に関する話がある”という合図だった。
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