海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
この時“受けてみないか?”と先生は聞いたけれど、実際、断る事なんて誰にも出来なかった。


先生からのすすめは“絶対”だったからだ。



希望職種というだけで試験を受けに行き、


どういう会社なのかなんて、さっぱり分からないまま就職が決まった人もいた程だった。



『就職なんてよく分からないから、先生の言う通りにする。』


そういう感じだったのかもしれない。




先生は、


「そうか、分かった。じゃあ今日から放課後は履歴書の作成をするから、この履歴書に下書きをしておきなさい。放課後の練習時間は大体18時位までだから。」


そう言って、私に履歴書用紙を手渡した。


18時位までなら習い事にも間に合うし、全く問題が無い。


私はその用紙を受け取ると、軽い足取りで職員室を後にした。


少しだけ、明るい未来への道が開けたような気がしていた。



教室に戻り、就職先の紹介があった事を瑞穂や梢、他のクラスメイトたちにも告げると「頑張って!」とみんなが応援してくれた。


まだ就職が決まるかどうかも分からない分、みんなの言葉や嬉しそうな笑顔に照れてしまったけれど、素直に、とっても嬉しいと感じた。




その日の放課後に向け、とても前向きな気持ちで履歴書の下書きをし、放課後は他の生徒も集まった部屋でみんな一緒に履歴書作成をした。


「先生、出来ました。お願いします。」


私が手渡した鉛筆で書いた下書きを、学年主任の先生が真剣に見つめる。


元々強面の先生だったから、とても怖い顔になっていた。


まるでヤクザだ。
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