海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
今年もまた、クリスマスは自宅で過ごした。


その後にやってくるのはお正月。


去年のお正月に相葉先生から届いた年賀状の、



“手袋どうもありがとう。重宝してます。”



このメッセージでどれ程幸せな気持ちになれただろう。




また年賀状を出したから、返事が来る可能性は高いだろう。


きっと、


『年賀状が届くだけでも、幸せな気持ちになれるはず。』


私はそう思った。




相葉先生からの年賀状は1月3日に届いた。



“あけましておめでとう。今年も頑張ろう!”


このメッセージだけで終わっていた。




『やっぱりあのネクタイは気に入ってもらえなかったんだ。』


と、私自身の中で確信した。


『却って相葉先生には申し訳ない事をしたのかもしれない…。』


そう思えて、ネクタイを渡した事自体を後悔する気持ちまで芽生えていた。



“今年も頑張ろう!”


私に残された学校生活は、3ヶ月間。


いや…。


実際には、3ヶ月も残っていない。


3年生の3月は、他の学年よりも早く終わってしまうから。




私は、自分にとって“卒業”する事がとても大きな節目になる事を感じていた。


卒業する事で“教師と生徒”ではなくなる訳だから、もしかしたら私の気持ちを受け入れてくれるかもしれない。


だけどそうじゃなかったら、多分、もう会う事はないだろう。



『今度こそ諦めなければならない。』


本当の終わりにしなければならない事を感じていた。



私は相葉先生と過ごす学校生活が残り僅かである事に焦りを感じながら、静かに冬休みを過ごした。
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