海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
『どうして?どうして大崎先生が―…?』



何も知らない先生は、動揺している私に気付く事無く、嬉しそうに話を続けた。


「大崎先生のお父さんが、河原が就職する会社の社長さんと仕事上の付き合いがあったんだ。その関係で大崎先生も知り合いだったらしくて、直接河原の事をお願いしてくれていたんだ。」



その話を聞いて、私は目の前が真っ暗になった気がした―…



私の就職内定は、自分の力ではないという事だ。


内定できたのは大崎先生の助けがあったからで、


大崎先生がいなかったら、不採用になっていたのかもしれない。




『自分の力なんかじゃなかったんだ…。』


私は誰かの助けがないと就職できなかった自分に絶望し、


その“誰か”が一番のライバルである、大崎先生という事に打ちのめされていた。



『今まで頑張ってきた事は何だったんだろう…。』


そう思うと、更に目の前が真っ暗になっていくような気がした。




「…だから、お礼言っておけよ?」


途中から殆ど耳に入っていなかった先生の話しは終わったらしく、私は慌てて


「分かりました。ありがとうございました。」


そう言って、精一杯の笑顔を浮かべながら学年主任の先生に一礼した。


喜んでくれる先生の気持ちを思うと、私自身が喜ばないわけにはいかないし、


どんなに嫌でも採用を辞退する事だって出来ないのだから…。




「失礼しました。」


職員室を出る前に挨拶と一礼をし、ドアを閉めて振り返ると、偶然にも大崎先生がこちらに向かって歩いてきた。



「あ…。」

大崎先生と目が合うなり立ち止まった私を見て、


「あら、河原さん。」

そう言って、大崎先生は私の前で立ち止まった。
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